口を開いて待っている

口を開いて待っている

待っている

口を開いて

待っている



邪悪なるもの


見えぬ心に潜む邪悪なるもの




歯を食い縛り
堪え生きる
その一瞬の隙に


拳を握り締め
堪え生きる
その一瞬の隙に



口を大きく開き
落ちてくるのを待つ



邪悪なるもの





目を瞑り
耳を塞いでも
罵り合う白と黒

絶え間なく続く
罵り合う両者の声

目を瞑ることもできず
耳を塞ぐこともできず
ましてや口を閉ざしても
心は逃れることもできず

正解に翻弄され
自分を失ってゆく




天使の皮を被る悪魔

利己的による
攻撃と無慈悲


悪魔の皮を被る天使

保守的による
擬態と無反応


その果てに生まれる疑心暗鬼


暗闇で目を凝らして生きる
暗闇で耳を澄まして生きる

緊張感に追い詰められ
自分を失ってゆく




歯が砕けるほど
歯を食い縛り

骨が砕けるほど
拳を握り締め

正解と緊張感に堪え生きる


気力を無くすその一瞬

気を許したその一瞬



口を開いて待っている

大きく開いて待っている

今か今かと待っている



邪悪なるもの

見えぬ心に潜む邪悪なるもの





油断ならない日々のなか

外皮も自分でいられるか

心ごと自分でいられるか





自分の皮を被る自分でいるには

その皮はまだあまりにも薄すぎる




それでも

それでも

飲み込まれるまい

飲み込まれるまい



どす黒く深いその口に

飲み込まれるまい





自分を失いたくない





飲み込まれるまい

口を開いて待つ邪悪なるものに

飲み込まれるまい