アンサツシャ
店員「お疲れ様! またね恋華ちゃん」
恋華「うん、またね! お疲れ様ー」
バイトが終わり、他の店員に手を振り店を出た恋華は、バス停に向かった。
バイト先は家から車で十五分ぐらいの距離だ。
冷たい夜風に、コートのポケットに手を入れて寒さを凌ぎながら、ポツポツとある街灯が照らす薄暗い歩道を恋華は歩く。
バス停に着いた恋華は、時刻表の横に立つ。
交通量も少なく、誰もいないバス停で恋華はボーッとしながらバスを待っていた。
(しかし思いきった事しちゃったなー)
今日、レインが買って行ったハンバーガーの袋の中に、自分のメールアドレスと電話番号をレシートに書いて入れていたからだ。
(見たらどう思うかな?
レインさんの事だからやっぱり捨てちゃうのかな?)
考えれば考えるほど不安と、そうしたことによる後悔の気持ちになったが、なぜか少しドキドキしていた。
運転手「お客さん! お客さん!」
恋華「……え? あ、はい!」
その時、正面から声が聞こえ、恋華はハッと我にかえる。
ビックリして前を見ると、いつの間にかもうバスが目の前に止まっていた。
運転手「はいじゃないよ、乗るの乗らないの?」
バスの運転手が、ボーッとしている恋華にマイクで話しかけていたのだった。
恋華「あ、乗る! 乗ります!」
恋華は急いでバスに乗った。
乗客の視線が集中する中、恋華は恥ずかしそうに下を向き席に向かった。
「恋華ー」
その時、後ろの座席の方から名前を呼ぶ声が聞こえ振り返ると、友達のアリスが乗っていた。