いつかの君と握手
明日はとうとう一年生親睦旅行へと出発する。

ぽかぽかと暖かい午後の太陽が、教室内にさしこんでくる。
ああ、お腹いっぱいで、眠たい……。


肩肘をついて、真面目に聞いてますよー、というポーズで、うつらうつらしているあたし。
教卓では、穂積が最終的な説明を行っている。
内容は昨日の班長会議で話した内容と一緒。
ということで、同じ話を何度も聞かなくてもいいので、大丈夫というわけなのだ。


「……で、明日は8時半までにK駅の西口前の広場に集合。各クラスごとに整列・点呼を行ってから駅構内に入ります。乗車ホームは……」


あー、荷物、結構重たくなりそうなんだよねー。
担いで電車に乗るなんて、本当にめんどくさい。
バスでいいのにー、もう。


「班長は集合時間の30分前には来てください。最終確認等ありますので」


あー。めんどくさーいー。
父さんに駅まで送ってもらおうっと。
出勤時間をちょっと早めてもらえばいいだけだしねー。


「では、これから班毎に分かれてください。分担した食材などの確認をお願いします」


あたしたちが向かう宿泊施設では、食事の提供がないのだそうだ。
調理場はあるので、そこで自分たちの食事を作りましょう、とのこと。
ちなみに、めにゅうは班ごとに好きにしろ(材料ももちろん用意のこと。米と最低限の調味料のみ、学校側が準備)、なんて生徒任せにもほどがある内容だったりする。


ちょっとおー、料理できないんですけどー。

作れる料理はハードボイルドな目玉焼きオンリーなあたしとしては、非常に嫌なイベントだ。

でもでも。琴音は何でも作れるお母さんみたいな人だから安心なのだ。
悠美たちもある程度ならできるよ、なんて言ってたし。

めにゅうだって、カレーとサラダとかじゃなかったよ、確か。
作り方の想像もつかないような、たいそうな名前のものを作るみたい。
悠美たちが張り切ってたもんね。かっこいい男の口に入れるものだから、ハンパはできないんだって。
女って大変だ、ほんと。

しかし、料理ができないからって他人事に思ってるわけではない。
できる範囲ではしっかり手伝うつもりです。
お皿洗いとか、得意中の得意ですしね。
人間食器洗い機と呼ばれてみせますとも。


「さー、材料の確認するよー」


いつの間にか、班ごとに分かれていた。
あたしが班長の3B班(3組のB班という分類だ)は琴音の席が集合場所というのがお決まりになっていて、すでにみんなが集まっていた。


「えーと、食材はこのリストで、持ってくる担当の人はー……」


琴音が説明を始める。
料理のできないあたしは、役立たずです。
班長やってもいいよなんて言ったくせに、食事に関しては琴音が仕切ってくれてるのだ。
はずかしー。


「ミャオちゃんも食材係だけど、用意できてる?」


琴音があたしに顔を向ける。
ええと、ろーりえとかずっきーにとか、そんなのだよね。
初耳な名前ばかりが羅列してあるメモ、もらったもんね。
そのメモを母さんに渡して、用意してもらいました、すんません。

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