恋の行方〜甘い約束〜
そうして、待ちに待った降車駅。


なのに…


人混みに紛れてサーっといなくなりそうな花梨ちゃん。



俺も慌てて追い掛けようとした時、ピタリと立ち止まった花梨ちゃん。



「…?」



声をかけようとした瞬間、振り返った。



背後にいた俺を見て、驚いた顔をする。



「あのさ、俺の事覚えてる?」



――この時、先に名前を名乗れば良かったんだと、後悔した。


「花梨ちゃんだよね?」


そう聞いた途端、みるみる猜疑心たっぷりの表情で、後ずさっていったんだ。



“怪しい奴じゃない。俺、純だよ。”



花梨ちゃんのそんな姿を見て、そう言って誤解を解こうとした時、ドンっとホームを歩く人が俺にぶつかって来る。振り返って、「すみません」なんて謝っていたら…



もう花梨ちゃんの姿はどこにもなかったんだから――
< 31 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop