「1/4の奇跡」左側の君に【完】
それからまたお父さんはお酒が進んでしまって、
拓人に絡む間もなくべろんべろんになって、
ソファーに寝てしまった。
拓人はあまり食べずに、もう帰る時間になってしまった。
ジャケットとリュックを取りに行くために、
また私の部屋に戻った。
拓人はジャケットを着て、リュックを斜めにかけた。
「あまり食べなかったけど・・・どこか具合悪い?」
私もコートを着ながら拓人にそう聞くと、
拓人はあははっと笑った。
「緊張してあんま食えなかった」
「めまいとか・・耳の調子は大丈夫?」
「めまいは本当にびっくりするぐらいないよ。
左耳は大丈夫だし。
このままだといいな・・・って思っているところだよ」
「そっか・・・よかった・・・」
階段を下りて、拓人はリビングのお母さんに挨拶をして、
玄関の外に出た。
「俺、駅までの道覚えたから、ここでいいよ」
「え・・駅までいくよ・・・」
拓人は私をぎゅっと抱きしめてきた。
「もう遅いからさ。
駅からひとりで帰らせんの心配だから」
拓人は私の頭をぽんぽんと撫でてから体を離した。
「わかった・・またメールするね」
「うん」
拓人はジャケットのポッケに両手を突っ込んで、
時々後ろを振り向きながら帰っていった。