「1/4の奇跡」左側の君に【完】
大学も決まって、
学校もあと、卒業式の練習と当日に行くぐらいで、
自由登校になった。
卒業前には検査の結果を聞いて、
気持ちをすっきりさせようと思っていた。
俺は親父に予約の日を相談して、
卒業式3日前に結果を聞くことにした。
そして、結果を聞く日。
俺は、いつもの診察室ではなく、
違う部屋に通された。
「和泉拓人さんですね」
「はい」
「お父さんもこちらへ」
俺と親父は、長テーブルの方へ座るように勧められた。
そして、
俺の前に白衣を着た若い男の先生が座った。
「遺伝子カウンセラーの相沢と言います。
では、【難聴遺伝子検査】の結果をご報告させていただきますね」
相沢先生は、テーブルの上に紙を3枚並べた。
「拓人くんのお父さんとお母さんにも検査をしていただいて、
おふたりには夏、結果をご報告させてもらいました」
「親父も・・おかんもやったの?」
親父は頷いた。
そうだったのか・・・
相沢先生は図を書き出した。
お父さん☆☆ お母さん★★
拓人くん☆★
「わかりやすいように、
図で説明しますね。
人間はお父さんからひとつ、お母さんからひとつ
遺伝子をもらいます。
黒く塗られた★が難聴遺伝子です。
★がひとつでは、難聴にはなりません。
でも★★と、二つ合わさると難聴になります。
拓人くんは☆★と結果が出ました。
ですから拓人くんの右耳の失聴が、この遺伝子からというのは、
ちょっと考えにくいです。
ただ、まだ遺伝子は解明されていないことが多いので、
原因は今回の検査ではわかりませんでした。
ただ、わかったことは、
拓人くんは、ひとつだけ
難聴遺伝子を持っているということです」