「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「違う。何もない。
私が勝手にドキドキして、
私が勝手にヤキモチを焼いて、
ひとりで空回りしているだけ。
おかしいでしょ?
私って噂では遊んでいるって言われているみたいなんだけど、
本当はこんななんだ。
初めて人を好きになって、
どうしていいかわかんなくなってんの。
笑っちゃうでしょ?」
「笑わないよ」
阿部さんは真顔だった。
「話してくれてありがとうって感じだよ。
それってさ、和泉くんは知ってんの?
葉月さんの気持ちは伝えたの?」
私は大きく首を振った。
「伝えなくちゃ。
私、和泉くん呼んでこようか?」
阿部さんは私の返事も待たずに、
階段を駆け上っていってしまった。
ちょっと・・ちょっと待って・・・
私も階段を上って、
非常口の重たい扉を引っ張ると、
拓人も向こうから扉を押し開けていた。
「あ」
「あ」