白と黒の神話
第8章
 グローリアの王都。そこには似合わない『うらぶれた』という表現が似合う場所。そこにはいつ建てられたのか誰も知らないような建物があるのだった。それはちょっと見た感じではお化け屋敷といっても過言ではない。しかし、生活している人物がいるのも間違いがないことだった。

 この場所にハートヴィル侯爵令嬢であるセシリアが出入りしているのは有名な話である。だからこそ、ここの住人は『お化け屋敷』という評判を気にする必要はない。もっとも、その人物自身がある意味での有名人であるのだからこの屋敷の風評は関係ないともいえるのだった。近隣の人々からは『占いのババ』、セシリアのように懇意にしている相手からは『グラン・マ』と呼ばれている相手。その占いのうでは確実であり、彼女が占えないことはまず無いと信頼もされている相手。その彼女は部屋の中で水晶玉をみながら、浮かない顔をしているのだった。
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