白と黒の神話
 その言葉に神竜は本来の竜の姿に戻っている。もう一度たしかめるようにグラン・マの顔をみた神竜はおもむろに大きく息を吐いていた。

 あたりに響く地響きともなんともいえぬもの。それだけではなく、柔らかな七色の光が都を覆いつくそうとしている。その光は熱こそ持っていないが、眩しく目を開けていることができなかった。


 そして――。


『終わったぞ』


 神の託宣を告げるかのような重々しい神竜の声。そして、目を開けた一同の前にグラン・マの姿は残されていなかった。ただ、彼女が着ていた巫女の装束とロザリオが残されているだけ。そのロザリオを拾い上げたセシリアの瞳からは涙がとめどなく零れ落ちている。


『これがシンシアの望みじゃった』


 神竜のその言葉もセシリアの耳には入っていない。それでも、彼女は自分が前に進まなければいけないことを感じているのだった。
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