白と黒の神話
「ねえ、夕べも話したけれど、一緒にお城に来てくれない?」

「あたしが行って、場違いになるかもね。だけど、一度は行ってみたいと思っていたのよね」


 そう言うなりミスティリーナは黒魔導師の着るローブに手をのばしている。それを見たセシリアはすっかり慌ててしまっていた。


「リーナ、あなたってそれ以外の服はないの」

「当たり前じゃない。あたしは黒魔導師よ。それに何か問題あるの」

「大ありだわ」


 そう言うなり、セシリアは大きくため息をついている。しかし、このことで押問答をして時間を無駄にしたくないようだった。


「仕方ないわね。まあ、この時間ならお抱えの魔導師とは鉢合わせしないか。そのかわり、侍女たちが変な目でみるかもだけど辛抱してよね」

「それくらい慣れてるわ。じゃあ、行きましょうか」


 セシリアの心配などものともしないように、ミスティリーナはコロコロと笑っている。ウェリオに出かけて来るからと気軽に声をかけた彼女はセシリアと並んで歩いていた。男装の令嬢と黒魔導師という、ちょっと変わった組み合わせの二人は周りの視線など気にすることもないように、城への道をたどっているのだった。
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