貴方が好きでした。
心音がこんなに大きく
聞こえることを、初めて知った。


今、何が起こっているんだろう。
あたしの頭は貴方の右腕の上。
貴方の左腕はあたしを包み込む。
少しだけ目線を上げれば、優しく
微笑む貴方と目が合う。


高鳴る鼓動は、落ち着くことなく
慌ただしく響き続けている。
目の前で起こっている現実が、
あまりに夢のようで、あたしの
頭の中は混乱していた。



『寒くない?』

『うん…』

『そっか。』



その言葉の後、当たり前のように
髪をなでる貴方はあたしを
そっと抱き寄せた。
ギュッと力の入ったその腕は、
少しだけ震えているようだった。


貴方の胸へ耳を寄せると、
あたしと同じように速く鼓動している。
同じ気持ちなのかな…?
貴方は何を思ってあたしを
抱きしめているの?


暗闇の静寂の中、あたしは
抱き締めてくれている貴方へ
さらにすり寄った。
息苦しささえ感じるその距離感に
幸せを感じるのは、こんな日が
来るのをずっと願っていたから?


気持ちが溢れ出てくる。
初めて感じる貴方の温もり、
貴方のにおい、貴方の鼓動。
全てが新鮮で、愛しくて。



お願い、他に何も要らないから
このままでいさせて……。
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