蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
絢乃が自分にどんな感情を抱いているのかはわからない。
けれど、自分に会うために休日を割いてここに来た。
その事実だけで、雅人の心は激情で突き動かされた。
物流システムの障害ではないことは、雅人には最初からわかっていた。
万が一障害が出れば、その連絡は真っ先に自分のところに来るはずだからだ。
絢乃経由で自分に連絡が来るということは、まずありえない。
そう、知りつつも・・・
雅人は絢乃にはそれを告げず、強引に帝国ホテルを出た。
その時点で、雅人の心にはひとつの決意が浮かんでいた。
───絢乃を、自分のものにする。
絢乃の心が少しでも自分にあるなら、自分は諦めない。
絢乃を自分のものにするためなら、どんな策でも弄す。
一度解放されてしまった心は、もう止めようがない。
それは雅人自身にも止められない勢いで、狂おしく胸を焼いていく。
「・・・婚約者、か・・・」