蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~

2.最後の仕事




一週間後の金曜。

夕方。

絢乃は鞄を片手に、田町駅に続く道を歩いていた。

クリスマスを翌週に控え、オフィス街である田町駅の周辺もクリスマスムード一色になっている。

絢乃は歩きながら、夜空を見上げた。


先週末、雅人は正式にグランツ・ジャパンを退職した。

退職後、第一開発課はお通夜のような雰囲気になったが、今週の中ほどからは卓海が課長として采配を揮い、今は大分以前の姿に戻りつつある。

───卓海はもともと真性が鬼なので、どちらかというとマゾ体質の第一開発課には案外ちょうどいいのかもしれない。

などと絢乃は思ってしまったのだが、仕事が回るようになったのはいいことだ。

そして・・・。

雅人は今日の昼過ぎ、北條商事の役員会で正式に取締役となった。

来週からは北條商事に出勤する予定らしい。


───『仮の婚約者』としての絢乃の仕事は、これでひと段落したことになる。



< 83 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop