蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~




「・・・38℃?」

「・・・」


熱がまた上がってきている。

今の話のせいだろうか。

どうやら鬼の瘴気は離れていても漂ってくるものらしい。

絢乃はふぅと息をつき、慧の顔を覗き込んだ。


「・・・ね、慧兄。加納さん来る前に、病院に行こうよ?」

「嫌」

「ちょっと診察してもらって薬もらうだけだから。ね?」

「嫌」


慧は天井を見つめたまま、固い声で言う。

絢乃ははぁと肩を落とした。

慧は昔から極度の病院嫌いだ。

慧は絢乃に対しては例えかすり傷でも病院に連れて行こうとするが、慧自身はかなりの病院嫌いで、相当具合が悪い時でないと行こうとしない。


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