蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~



<side.卓海>



23:00。

卓海は自室のベッドの上で、ヘッドボードに寄りかかり掌をじっと見つめていた。

・・・掌にあるのは、あの給湯室で絢乃が落としていった髪留めだ。

髪留めはシルバーでできており、リボンの形をしている。

リボンの輪郭に沿って小さなピンクルビーとエメラルドが嵌めこまれてあり、優美で女性らしい雰囲気の髪留めだ。


「・・・っ・・・」


卓海はそれをぐっと握りしめた後、勢いよく壁に投げつけた。

カシャンという悲鳴のような金属音の後、髪留めがカランと床に転がる。

金具が外れ、髪留めは本体と留め金部分に分解してしまった。

無残に壊れたそれを、卓海は昏い瞳でじっと睨みつける。


「・・・」


< 54 / 190 >

この作品をシェア

pagetop