求*幸福~愛しい人はママだった~【完】


まぁ、抱き締めたり、唇が触れるキス、そしてベッドに二人で寝ていて朝を迎える…シーンがあるだけで、濃厚なものはない。



それでも、なんだか、彩乃を裏切っている気分になり、撮影でテンションが下がった。



そしたら藤原理世が「ふふっ…好きな子に罪悪感?」なんて耳打ちしてきた。



思わずバッと顔を上げると、穏やかな顔で「あたしを彼女と思えなんて言わないわよ?ただね、プロとして、役者として罪悪感を感じるなんて、逆にその人に失礼じゃない?あたしは主人を愛しているけど、役者として求められるものがあるのなら…どんなシーンだってやるわよ、誇りを持ってね」そう、凛々しく言ってくれて肩をポンとして、自分の控えに戻って行った。



『あぁ…俺は甘いなぁ』と胸をグッと捕まれたような感覚で思い知った。




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