【砂漠の星に見る夢】

「イシス様、大丈夫ですか」


心配そうにそう告げる侍女達に、イシスは力ない笑みを見せた。


「大丈夫よ。ごめんなさい、今日は一人にしてもらっていいかしら」


その言葉に侍女達は「かしこまりました」と頷き、部屋の外に出た。


――侍女達がいなくなっても、扉の前には屈強な番人が常に見張っていた。


窓から逃げ出そうにもイシスの部屋は離宮の一番高い位置に存在し、窓から飛び降りることは死を意味した。


イシスは重苦しい気持ちで、ゆっくりバルコニーに立ち、はるか下を眺めた。


何度、ここから飛び降りることを考えただろう。


どこかで『最高の接待』を受けている父母のことを思うと、死ぬことも許されなかった。

< 144 / 280 >

この作品をシェア

pagetop