Special


レンがホストデビューする前におれは全部を聞かされた。



「堂本さん」
「どうした」
「…聞いて欲しいんです」


それはきっとレンにとって一つの壁を乗り越えようとしてた時だった。


“ホスト”としてこれからを生きる為に――


「だいぶ前の痣はもうほとんど消えました。火傷の痕はそのままだけど…
あの時に堂本さんのことだから察しはついてたかと思ってます。
俺は、両親に虐待を受けてました…母は暴力ではなく、俗に言うネグレクト。父は――――父は………俺は自分の本当の父親を知らない」


レンはただ淡々と、感情も出さずに続けて言う。


「この火傷をつけたのは再婚相手の男です。母はそいつに逆らえない。
俺はそんな母にさえ逆らえない。当時の自分はあまりに非力で屈することしか出来なかった。
それしか生きる方法を見い出せなかった。

母は…“女”でした。
俺が物心ついたときからずっと、女であり続けた。

だからどうしても俺の中には“女”という存在が腹立たしくて、信じられなくて、憎くて……淋しい。
そんな風にしか思えないんです。

…このことを誰かに言ったのは堂本さんが…初めてです」



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