Special


まさかまた、ここに足を向けるとは思わなかった。


一応“故郷”とでも言うべきか―――
8年も経てば変わるもんだな。


町も

人も―――


だけど変わらないことも勿論ある。


「ここ、だな」


目の前にひっそりと建っているのは、なんら8年前と変わらないボロいアパートだ。

俺はアパートをゆっくり見上げた後目を閉じた。

目を閉じても、あの頃を思わせるような匂いもする気がして少し顔を歪ませる。


14の俺は耐えられず、ここを離れた。


ハタチを越えて、完全にカラダが出来上がって力でねじ伏せられる自信がついてもここにこようなんて一度足りとも思ったことなんかなかった。

カラダは強くなったとしても、ココロは多分14のまま弱かったんだ。

正直、本心ではこんなとこに来たくもないし、会いたいだなんて思わない。


じゃあなぜ、今自分はここに立っているのか―――


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