Special

二人の訪問者



ま、マズイ…!

全速力で自宅に戻った私は玄関の前に立つ人影を確認して身を縮めさせた。

すっかり忘れてた・・・

恐る恐るその人物の顔を見る。


「あ・・・」


私の言い掛けた一言に弾かれるように顔を上げ、こちらを見た。


「い、いつから・・・?」
「朝からだ。出張ついででな。随分と音沙汰なかったなぁ…由麻!」
「・・・・はい」


私は部屋にあがって2つのグラスにお茶を注いでそれを差し出し、自分も座る。


「・・・ごめんなさい」
「全くだ。由麻、ちゃんと定期的に連絡を寄越すこと。たったそれだけの約束も守れないのか?こっちにきたからそんな無責任な人間になってしまったんじゃないか?」
「―――私は変わらないよ!ただ・・・・ただ、ちょっと忙しくて。それで・・・」


私はやましいことしてない。

だけど、最近の“忙しいこと”の中身は絶対に理解して貰えない。

そう思ったから歯切れ悪く、黙ってお茶を見つめてた。


「そんなんじゃあ、一人暮らしをやめさせるぞ。」
「――――お父さん!」
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