Special
◇番外編 〜Masaki's side〜

「いらっしゃいま…あ、また来たの? №1」


カラン…とどこかレトロな音が響いたと思えば、カウンターから聞こえてくる声。


「…うるせぇ。その呼び方やめろ」


オレは舌打ちをしながらカウンター越しにそう言ってきたヤツに返す。
そして、そのまま誰も居ないカウンターの真ん中に座って言う。


「いつもの」
「どーぞ」


オレの言葉が言い終わるのと同時くらいに目の前にグラスが置かれた。
無色透明で小さな気泡が次々と表面に弾けては消える、その液体をグイッと喉に流し込む。


「…相変わらず無茶な飲み方するね」
「…それはどーも」
「褒めてないよ。それとも店ではこういうのが客の褒め言葉?」
「アホか」


トンっと置いたグラスの中で氷が音を立てて崩れる。


「しかし、この店はよくこんな時間まで置いておくな、女なんて」


カウンターを挟んで涼しい顔をしながらグラスを磨き、オレに淡々と言葉を投げかけてきていたのは女だ。







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