Special
◆レンになった日◆

出逢い





『二度と俺の前に現れるな』


すごく効いたなー…あの一言。

昨日までの私ならあの場で泣き崩れてたな。


なぜかどこかで冷静な私がいる。
都合のいい解釈かもしれない。


“わざと”突き放したがってるんじゃないかって―――


知らない間に図太くなるもんなんだな。
あの日あの黒い扉を開けた時から度胸が据わったのかな。


空を見つめてそんなことを思っていると、ふと鞄の中の返す筈のものを渡していないことに気付いた。


――合鍵と、ハンカチ。


だけど会ってくれるかな。
お店に行ってもマサキがいるから下手に動けないし…

マンションに直接行くのも写真を撮られたこともあるから行けない。
そもそもオートロックだから開けてもらえなさそう。

部屋の棚に上げたままの名刺を思い出して体を起こす。


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