いけにえ系男子【BL】

何処かの窓が割れる音がした。

出入り口のシャッターは、叩かれまくって内側にボコボコ変形している。

……あー、もうヤバいって!


俺らボコされて彼女さんが連れて行かれる。
そんな想像しか出来なくなった時、電話の向こうの総長が出した結論は。


『お前、アイツのふりしてろ』

「……いや、無理っす」


確かに、彼女さんは背が高い。
やたら背の高い人が集まるここでは周りよりちょっと低目かなーな俺とは身長が同じ位だ。

だからと言って、誤魔化せる訳がないだろ?!

彼女さんは女で、俺は男だ。
無茶すぎる。
さすがにバレルだろ。


『大丈夫だ、奴らはアイツの事をまったくと言っていい程知らないはずだ』

今まで必死に守ってきたから、遠目で見られたぐらいしか無いらしい。

大した情報も無いのに彼女さんを狙ってこれてるのは、うちのチームに出入りする女は他にいないからだろう。


「いやいや、でも、」

無理っすよ。と繰り返そうとした俺に、それに、と総長は続けた。


『俺が必ず助けに行く』


決意の籠められた熱い声。

こんな声で彼女さんにいつも甘い言葉を囁いているんだろうか。

ヤバいな。



「わかりました!任せてください!」


思わず俺は了承していた。

< 3 / 25 >

この作品をシェア

pagetop