通りすがりの日々


「お母さん私、好きな人が出来たの。」

「まぁ、宮砂からそんな話が出るなんて初耳だわ。」

お母さんは嬉しそうに宮砂の話に耳を傾ける。

「で、どんな人なの?会社の人なのかしら?」

「ううん違うの、フリーのカメラマンだって。」

「フリーのカメラマンなの?」
母親は声を大きくして聞き返した。


「うん、日本全国を巡って写真を撮ってるんだって、つい最近は桜と一緒に北上してたみたい。」

「してたみたいだなんて、確信の無い言い方をして、本当にカメラマンなの?」

「本当だよ!」


今度は宮砂が大きな声を出して答えた。


「とっても素敵な写真を撮る人だよ。」
笑顔で答える宮砂に、ちょっと怪訝そうな母親が質問責めで聞いてくる。

「フリーだなんて定職じゃ無いんだったら毎月の収入は、まちまちじゃないの?」

「すぐお金の話になるんだねお母さんは。」


憮然として答える宮砂。

「当たり前でしょサラリーマンじゃ無かったら一定の収入が見込まれないじゃない。」

「あ~だから話したく無かったんだよ。」

「何言ってるの?大切な事なのよ。」




この頃の宮砂には愛情と言うだけの感情だけで生涯を決めていた。


今思えば本当に
若気の至りだった。




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