醜女と呼ばれた姫
醜のくせに。
歌も満足に出来ないのにねえ。かわいそうに。
そんな夢を見て跳ね起きた。胸が酷くうるさい。
うたた寝をしていたらしい。開きっぱなしの冊子がそのままで、ああ、とため息。
先日の歌会で会った、あの男は何者なのだろう。
結局名前を知らずにわかれてしまった。名前がわからないのではお礼の文も出せない。
それは少しだけ、心苦しい。
あれっきりで、もう会うこともないだろう。
嫁いでいった若草はうまくやっていると聞いた。
彼女のことだ。じきにおのこでも産むだろう。