逢いたくて
「なんで泣いてる?」

「へっ?」

寝てると思ってた…

「どうした?」

「なんでもない」

慌てて涙を拭いてごまかす

まだ渉には気づかれたらだめ

「咲」

「……気持ち悪いだけ」

赤ちゃんのせいにしてる自分に罪悪感…

でもいまはこういってごまかすことしかできない

「大丈夫?」

渉はからだを起こして脈をとりはじめる

「大丈夫!」

不自然とわかりながら立ち上がり花瓶の水を変えようと手をかけた

「咲、座ってたほうがいい」

突然離れた私を渉が不思議に思わないはずがない

「咲」

花瓶に手をかけた私の手に渉の手が重なりそっと身体の向きを変えた

「無理するなって言っただろ」

「……」

「妊娠すると誰でも不安定になるんだから。気にするな」


…なんとかごまかせた

私はばれなかったのをいいことに渉に抱き着いた

いつもなら病院でこんなことはしない

今だけ…

今だけ…
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