逢いたくて
それからの時間はあっというまだった

お葬式の準備や仕事の引き継ぎとか形見わけ財産分与などなど渉は息つくひますらないほど忙しそうにしていた

ひと月たったころやっと落ち着いた渉は久しぶりに家で休んでいた

今日までは寝るために帰っているような状態の毎日

のんびりと朝起きてソファに座り新聞を読んでいる渉は久しぶり

掃除や洗濯をしながらもなんだかいてくれるだけで安心する

「咲」

「ん?」

洗い物をしていると渉が私を呼びながら自分の隣をとんとんした

ふたりでいるときだけの甘えた顔

その顔に私は弱い

となりにすとんと座る

渉を見るとにっこり笑った

「忙しくばっかりしてごめんな」

すっとお腹に渉のてがまわる

「また大きくなったな」

「うん」

「楽しみだな今日」

「うん」

今日渉がいる理由は検診があるから

赤ちゃんのために休みをとってくれた
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