逢いたくて
夢の中の渉は赤ちゃんを抱き私に背を向けていた

その背に手を触れようとして触れてはいけないと手を止める

その繰り返し

何度も繰り返したところで目が覚めた

みなれた寝室

隣には怖い顔の渉が腕を組んで座っていた

「…渉…」

自分の声がかすれてる

そういえば喉も痛い

視線をずらすと点滴があった

「なに考えてんだっ!」

渉の荒々しい声は初めてでびくっと全身がはねあがった

「どういうつもりだっ!約束しただろ離れないって!」

「ごめんなさい…」

「死にたいのか!」

「……」

全身がたがた震える

「ごめんなさいっ!」

耳をふさぎ布団に顔をうめた

渉の顔が見れない…

『バンッ』

寝室のドアが力任せに閉められた

渉…出て行ったんだ…

布団から出るとやっぱり渉はいない

謝らなきゃ…

悪いのは私…
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