逢いたくて
譲は私の頭をぽんと撫でて渉に深く深く頭を下げて部屋をでた

沈黙が私たちを包む

長い沈黙をやぶったのは渉だった

「俺嬉しかった」

「え?」

「咲が俺とのこと言ってくれて、俺の方に来てくれて、過去を知ることができて。実はずっとどきどきしてたんだ。いつか咲は過去に戻るんじゃないかって…。それが今日なのかもしれないって…。」

「渉…」

「でも…医者としてフェアじゃない気がするから言っとく…膵臓ガンは進行も早くてガンの中でもコントロールが難しい。」

「……」

「もしかしたら…ってこともある」

「……」

「今決めないと後悔することになるぞ?一緒にいるかどうか…」

渉はどこまで私を思ってくれているんだろう…

渉の言葉の裏にある気持ちを考えたら涙があとからあとから溢れ出した

その涙を見て渉は更に続けた

「俺は咲に幸せになって欲しいんだ。他の誰でもない。咲に…」

「…わた…」

「俺咲と出会えたから自分じゃない他の誰かの幸せを願えるようになれた。だからこれは俺の本心だよ。咲の一緒にいたいと思う人といてほしい」
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