カサブランカにはなれない
守が別れようと言い出さないという事は、私の事を好きだという事だと
ずっと信じてやってきた。
考えてみると私はずいぶんポジティブなのかもしれない。

手先と足先が冷えて感覚が無くなって来た。
柱時計を見てみると、もう七時四十五分になっていた。
私はどうしたのだろう、事故にでも遭ったのだろうか心配になり
携帯に電話した。
長い間呼び出し音が鳴って、やっと守が出た。
「もしもし。」
私は何があったのかと心配になりながらおそるおそるしゃべった。
「・・・あ。もしもし?」
守が蚊の鳴くような声で出た。明らかに寝起きの声だった。
「・・・え??今日待ち合わせしていたよね?」
私は、いっぺんに怒りが込み上げてきた。
「・・・そうだったっけ??わるいわるい。今から行くからちょっとまってて。」
そういって、守は電話をぶっきらぼうに切った。
その時、道の向こうから守が走って来た。
「ごめん、遅れちゃって。」
守は息を切らして言った。
たいしてすまなそうな顔もせずに、一息ついてタバコの火をつけた。
「・・・うん。忘れていたの??」
「・・・うん。昨日バイト先の人と徹夜で麻雀していたから、寝ちゃっていたわ。
あ〜今日何も食ってないから腹減った。あそこのファミレスでいいよね??」
「・・・・。」
「あ〜さみぃ。はやく行こうぜ。」
私は、あきれて何もいえなかった。
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