さよならまた逢う日まで
でも気が付いたんだ、目が合うのは偶然じゃないと。



俺があいつを見ている彼女を見つめているからだ。
　


いつも俺の隣にいる啓太を見ている彼女を・・・。

　


サッカー部を動かし、俺を変えたあいつは俺にとって大きな存在だった。


だからこそ認めたくなかった。


勝てっこないから。

　

運気ってものは波のように変動するものであり、いい時もあれば何もかもがうまくいかない時もある。


当然だが、他の高校に比べエンジンのかかりが遅かった俺たちは、どこへ行っても情けないくらいの惨敗だった。

　

俺らだって悔しかったから、啓太の悔しさは計り知れないものだったにちがいない。


もしかしたらそれは悔しさというより、屈辱といった方が正解かもしれない。

　

啓太は、負けるたびに、その対戦相手にいた旧友に同情され、屈辱を味わい前向きだった思いをすり減らしていった。

　

そして、部活へ顔を出さなくなっていった。

　
悲しいことに、俺の隣にあいつがいなくなると堺と目が合う確率がおもしろいほど減っていた。


もう笑うしかない・・・。


ふとした時に、彼女は昇降口を見つめ一人帰ろうとする啓太を目で追っていた。

　
自分の意思がなく友達がすることなら俺もそれでいいって、物事だいたいは人に便乗してきた俺にとって、一人でもやり遂げいろんな人の気持ちを動かす啓太が羨ましかった。

　
だからあいつが抜けた途端、また前と同じくだらない部活にするわけにはいかなかった。


あいつがいなくても成り立たせてやる。　



あいつへの嫉妬が俺をやる気にさせていた。
　


そして今度は俺があいつの心を動かしてやる、そう思った。　
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