さよならまた逢う日まで
桜井がおばちゃんの所で昼飯を調達している間、俺は一人部室に入った。


部室は俺が来ていた頃と大して変わっていなかった。


変わったことと言ったら、


貼り付けられたグラビアアイドルのポスターが違うものになっていた。



俺のロッカーはそのまま残っていた。



静かに開けるとロッカーの中にスパイクだけが置き去りにされていた。


なんで俺だけが…あんな奴より俺の方が…試合に出るたび膨れ上がる想い。


張り裂けるのを必死に堪えても昔の仲間が否応なしに刺激してくる。


その想いに向き合い自分をなだめる事に疲れておれは逃げた。



走馬灯にも流れないほど記憶からも消し去りたかった。



「またここに来るなんてな…?」



最後に履いた時のまましまいこまれたスパイクはあの時の記憶を突き付けた。



「バカみたいなプライドに悩んでいる時間がなんてもうないんだ。ずいぶん待たせたな。」



スパイクを撫で喉の奥に詰まっていた想いを吐き出した。


「俺も…待ってたよ。」


いつの間にか桜井が戻ってきていた。



「俺のブランクはお前へのハンデだと思え」


俺はニヤニヤと桜井を見た。


「全くプライド捨ててないじゃん。」


桜井は肩をすくめ外国人みたいなお決まりのリアクションでぼやいた。



昼飯を食べている間は今までのブランクはなかったかのようにサッカーの話で盛り上がった。



後からやってきた奴も俺が部室にいる事に一瞬驚きはしたものの何一つ変わらず時間が流れた。


もっと早く来ればよかった…。


そう思ったけどそんなものも拭い捨てた。


他の奴らよりも新しいユニフォームに袖を通しグランドに出た。























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