さよならまた逢う日まで

そして明日がやってくる。


明日でラスト。


「コキッ」


そん時LINEの受信音がなった。


堺からだった。


「明日試合だね。頑張ってね。」


「試合終わったら、迎えに行く。」


すぐに返信した。


「コキッ」


「待ってるね」


それだけのやり取りでまた胸が苦しくなった。


伝えたい気持ちは溢れるほどあった。


どれだけ伝えられるだろうか。


どれだけの思いが届くだろうか。



明日でラスト。





「啓太？ちょっと入ってもいい？」



ドアの向こうに母ちゃんの声がした。


「ああ、どうぞ。」


その声と同時に母ちゃんが顔を出した。


「明日、試合だね。練習も随分頑張ってたね。


頑張るんだよ。母ちゃん明日は仕事で行けないけど、次は応援行くからね。」


それだけ言うとドアを閉めようとした。


「あっ、母ちゃん。

俺のことここまで育ててくれてありがとうな。


母ちゃんの気持ちも考えず、反発ばっかりして困らせて、悪かったな。」


思いもよらいない言葉に目を丸くして母ちゃんは部屋に入ってきた。


「急に何言ってるの～。結婚式のスピーチじゃあるまいし。結婚するときに聞かせてもらえばいいから。」


少し目を潤ませながら母ちゃんは笑った。


「結婚式か…そうだな、そん時でいいか。」


そう言って俺も笑った。


もう一度ドアを開けようとした母ちゃんの背中に向かって言った。


「母ちゃんの息子でよかったよ俺。


これも結婚式の時でいいか。」


「そうよ…そん時まで涙取っておかなきゃ。とにかく明日頑張ってね」


声を詰まらせ母ちゃんは部屋を出ていった。





「ありがとうございました。」


母ちゃんが出ていったドアに向かって俺は一礼した。