死刑への日々
 二十一時、就寝のチャイムが鳴る。
 明るい中で眠りにつくのだ。
 今日は『安全日』だったので比較的気持ちを穏やかに保つことができた。だが、明日は『危険日』とされる金曜日だ。
 刑の執行は何故か金曜日に多くされる。
 だからその日の朝は死刑囚たちの恐怖の時間となる。刑務官の足音が近づいてくるとき、云いようのない恐怖が襲ってくる。息を殺して足音が過ぎるのを待つ。そして足音が過ぎていくとき、張り詰めていた心が一気に解放される。
 私は自分の刑を受け入れている。
 それでも死への恐怖は拭い去ることができない。死は誰にでも訪れるものではあっても時間も空間も、そして自分自身の存在も、他人の手によって奪われてしまうことに恐怖を感じてしまう。
 私が起こした事件の被害者たちも同じ思いであったに違いない。だが、私は彼女たちの恐怖に喜びを感じていた。
 それが間違いであったことに気づいても、時が戻るわけではない。そして間違いであったと気づいた今でも、他人の死を喜びと感じる性質は変わっていない。
 私の本能は生を望んでいるが、私の理性は死を受け入れるべきだと告げている。これ以上生きていれば、私は同じ恐怖を振りまき続けるだろう。
 だから、これで良いのだ。
 死への恐怖を感じながら生き、そして他人の手によって生を断たれることが私のすべきことなのだ。
 今日も無事に生きられた。
 壁のカレンダーに生きた証を残しておこう。
 それはいつか途絶えることだろう。
 そして私という存在がこの世界から消えていくだろう。
 多数の生のために…。
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