運命という絆
「会長は、何故、進学しないのですか?会長に近い先輩達も、京都大学だとか急に志望校を首都圏から変えたし…一体何が起こっているのか?学校中が今、揺れています…」
言葉を返す様に由美が言った。
「……人に進路を変えさせた俺が、東京で大学には行けないでしょ。俺は、浪人し東京に残る…」
「他人の為にですか?」
「いや!自身の為にかな…」
「合同祭の後、母から進路を尋ねられました…私は、特別な目標は今は無いと答えたら…『それなら花嫁修行をしたら?』って…」

「そうよ!私は、それが一番だと、この歳になって気付いたのよ!御待たせしました…」
母が酒とグラスを用意して居間に、話を繋ぐ様に戻って来た。
「じゃあ由美、蝋燭に火を着けて頂戴な!」
母の優しい言葉を受け由美は、45本の蝋燭に火を灯した。

「じゃ明かりを消すわよ!」
暫く、暗くなった部屋に沈黙が訪れ蝋燭の揺れる炎を三人で凝視した後、母が「会長さん消して下さいな…」
その声に、拓真は首を縦に振り大きく息を吸い込み一気に父への想いを込めて蝋燭へ向け吹き消した。
「僕の我が儘に付き合わせて本当にありがとうございます…言葉には変えられない位、感謝しています」
拓真が、真っ暗な部屋の中で呟いた。
「きっと、御無事である事を私達親娘も祈ります…」
母の声が暗闇から聞こえた後、又も沈黙が暫し続いた。


「僕の家庭は、物心着いた時から父が母親でした…母が表に出て父が家に居ると云う全く逆の生活。でも、それだったからこそ今の自分があると思います…」

灯かりが点き、ケーキの蝋燭を一本一本外しながら拓真は話し始めた。

「今の立派な貴方を御両親に見て欲しかったと…私は思いますよ。御両親を尊敬すると共に素直に羨ましさを感じます」
母がシャンパンの栓を空ける準備をしながら言うと「お母さんは、合同祭終わってから優しくなったんですよ♪」由美は、ケーキにナイフを入れながら楽しそうに話した。大きくは無いケーキだが明らかに等分では無く、拓真の分は多かった。
「あら?母親より会長さんですか♪でも、仕方無いわね…貴女のお小遣いで買った物だし」
「そうなんだ!ありがとう」「もう!会長は何度もありがとうは無しですよ。でも、そんな会長が大好きです♪」
「合同祭は素敵でした。見事な統率力…あれは、あの場に居た皆の心に響きました。"ありがとうの沢山の言葉"…"多くの笑顔"…大人への"見て見ぬ振り"…"生徒全員の参加」
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