タイムストッパー

閉店時間

 時刻は午後三時になるところだった。銀行の閉店時間が迫っていた。

 戸井田は明日ではなく、今日に変更した。電話がくるのを待ちくたびれたのだ。もちろん閉店時間があと数分だった。

 チャンスがなければ、今日は銀行強盗をしないつもりだ。

 ATMを利用する客はまばらに来店してくる。

 窓口まで行く客は皆無だ。

「ああっ」

 戸井田は見覚えのある顔が銀行に入ったので、行動を注目した。

 確か二ヶ月ほど前だったはずだ。年齢は四十代半ばの女性だ。服装も茶系で地味な印象だった。

 銀行の自動ドアをくぐるときは、さほど緊張もなく、入って行ったが、窓口まで行ったので、凝視していると、お金を下ろしたようだ。行員がお札を数えて、確認を求めて、了承すると、札束は置かれた。

 戸井田はあわてて、銀行に進入した。ATMの設置してあるコーナーをすり抜け、二つ目の窓口につながる自動ドアが開いたところで時間を止めた。

 百万円単位なら封がしてあって、盗ることは困難だが、それ以下だと封はしていないのだ。

 窓口の客は戸井田にとってターゲットだ。

 もちろんお札に封はしていなかった。

 盗るチャンスだ。
< 135 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop