タイムストッパー
「いじめじゃないって、信じろよ」

 大口は千紗に向かって言った。

 千紗は口をとがらし、黙って前を向いたままだった。

 田久万は気がついた。今まで教室は騒がしかったが、大口と茂呂の一件で生徒たちは注目して、教室内は静かだったのだ。

 その中でも木霊玲が携帯電話を片手に、大口と茂呂のゴタゴタを動画に録画していたようだ。ケラケラと笑い声が響く。

耳障りだ。

 玲は隣のクラスだが、うちのクラスによく出入りする。島目慶子と仲が良く、休み時間になるといつもいるのだ。

 慶子は美人だ。顔は小さくストレートの髪を背中まで伸ばし、時にはポニーテールに結んでいる。足は長く、モデルのようである。

 そう言えば、玲は去年までモデルの仕事をしていたようだ。夏休みに友人の家でDVDを見た。ジュニアアイドルとかいって、水着姿の玲が写っていた。スクール水着からビキニ姿まで披露していた。中学生のわりには胸のふくらみが大きかった。しかし、顔はどこにでもいるような中学生で魅力はない。

 玲は田久万のタイプの顔ではないのだ。

 慶子は田久万のタイプだが、美人なので、男子の憧れの的でもある。

 田久万はもし、慶子のDVDが発売されたら絶対に買うだろう。でも、実際そうなったら嫌な気持ちもある。慶子の水着姿は見たいが、DVDを購入した人たちに見られるのも嫌だし、その現場にいる男性スタッフたちに生でながめられるのがもっと嫌だ。
< 5 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop