タイムストッパー
 金の問題で退学が格好悪くて、教師の前で堂々とタバコを吸ったのだ。

 放課後、教室にくると知っていて戸井田は準備をして廊下で待っていた。

 担任の教師が見えると、戸井田は教室に入り、タバコを吸った。もちろん周りにいた生徒たちも驚いて口を開けたままだった。何か言おうとしたときには教室に教師が入ってきた。

 戸井田にしてみれば絶妙のタイミングだった。

「タバコを吸うな」

 教師はものすごい剣幕で怒鳴った。

「うせっ!」

 戸井田はこの状況を大人たちに助けてほしかった。

「停学だぞ!」

 決まり文句のようにしか言えないのだろうか。

「タバコくらい、いいだろう。覚せい剤をやっているわけじゃないんだから!」

「両方ともダメだ!」

「タバコはハタチになったら、オッケーだけど、覚せい剤は年齢に関係なくダメだろう。幻覚を見て、場合によっては無関係の人を殺してしまうかもしれないんだぞ」

「何を言っている?」

「タバコを吸っても殺人をしないってことだよ」
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