子犬系男子
「せーんぱい!」

七瀬くんがそう言えば、教室にいた女子たちが悲鳴のような奇声のような声を上げた。

「はい…」

目を合わせず返事をすると七瀬くんは無理矢理目を合わせてくる。

「ご飯一緒に食べましょうよ!」

ふざけるな、お昼ぐらいゆっくり食べさせてくれ。

私が答えるより先に教室にいた女子たちはまた悲鳴をあげる。

「いや、お昼は友達と食べるので…」

そう言って沙有里ちゃんを見れば目をパチクリさせている。

「あ、あの…沙有里ちゃん?」

「ちょっと!なんで愁ちゃんが七瀬くんと知り合いなの!?」

興奮したように私と七瀬くんを見てくる沙有里ちゃん。

七瀬くんって有名人なのかな?

それにしても目が怖いよ沙有里ちゃん。

「俺が愁先輩に告白したッス!」

そう言って未だニコニコしている七瀬くん。

「こ、告白!?ちょっと!どういうことなの愁ちゃん!!」

肩を朝以上にガンガン揺らしてくる沙有里ちゃんの腕を必死に掴む。

私が話せない状況だと把握した七瀬くんが口を開いた。

「昨日愁先輩と廊下でぶつかった時に俺が一目惚れして…今日の朝告りました!!」

「という訳で!愁先輩貸してください!」と言って七瀬くんは私を沙有里ちゃんから離した。私は物じゃないぞ。

「そういうわけです。沙有里ちゃん助けて」

そう言って七瀬くんの元から離れて沙有里ちゃんの隣に行けば「ちょ、愁先輩!?」と言ってこっちに近づいてくる七瀬くん。

未だ状況がよく分かってない沙有里ちゃんの頭の上にはクエスチョンマークが見える。

相変わらずクラスの女子はうるさい。

「朝も言ったけど、私はキミと付き合う気なんてさらさらない。ましてや彼氏を作る気なんてないの」

そうきっぱり言ってやれば「うーん」と七瀬くんは考え始めた。

沙有里ちゃんは隣で「朝は犬に捕まってたんじゃないの!?ねぇ!愁ちゃん!!」と言っている。

ごめんね沙有里ちゃん、後で詳しく話します。

沙有里ちゃんを宥めていると七瀬くんはひらめいたように「そうだ!」と言って私の肩を掴んできた。

今度はいったいなんなんだ。

七瀬くんの次の言葉が怖い聞きたくない。

「愁先輩!!」

「なんでしょうか」

「彼氏がダメなら…」




どうしよう…嫌な予感しかしない。




「俺を愁先輩のペットにしてください!!」

ほらね、彼に関わるとろくなことがない。




教室中から嵐のような悲鳴が響く中、私は七瀬くんのキラキラ光る瞳を見て大きくため息をついた。
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