理想恋愛屋

4.小さなオンナ

「お疲れ様ー!」

 未だ興奮冷めやらぬオレたちは握手を交わしあい、ジュースでの打ち上げだ。


 ナレーションをしていた先生は

「途中どうなるかと思いましたけど、子供たちのあんな表情みれてよかったです」

 結構おもしろかったですよ、なんて楽しんでるもんだから。

「は、はは……必死だったんですけどね…」

 意外とオレの苦労をわかってはくれていないみたいだった。


 そんなオレの元へやってきたのは、大分損な役回りの園長。

「葵さん、本当にありがとう」

「先生~?作ったのはあ・た・し!」

 横から入ってきたのは、もちろん全てをやりきった彼女。

「そうね、遥姫ちゃん、あなたのおかげよ。とっても素敵なお話だったわ」

 抱き合う二人の姿に、少しだけ小さな頃の話も聞いてみたいな、なんて好奇心が疼いた。

オトメくんも秋さんも気分も高揚しているせいか、やけにおしゃべりだった。


「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたけど、なんとかなるもんですね~」

 細目をぐっと細めて零れる安堵のため息。

彼も彼なりに、自分の苦行と戦ったしな。


「なかなか演劇なんてしないから、とっても楽しかったわぁ。でも今度はぜひ主役をしてみたいけどね」

 またもや色仕掛けをつかってくる秋さんにほとほと呆れる。

本当にタダでは転ばない人だ。


 しかし賑やかな控え室の扉が、ほんの僅か開いたことに気づいてしまった。

子ども達はあのあとすぐに帰宅となり、今は大人たちだけの空間のはずだった。



「どうかしたか?」


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