理想恋愛屋
「あれはあたしの!!勝手に食べたら承知しないから!!」

 ギロリと縄張り争いの猫のように目を光らせる。

さすがのオレも怒りがこみ上げてくる。


 なんだこの女王様気取りは!


「ちょっと、待てよ!」


 肩を掴んで向きなおさせると、彼女の左手にかすかに見えたハリセン。

キラリと光った瞳がオレを睨みつける。


 同じ手にそうそうひっかかってたまるか!


「なにすんのよっ」


 学習能力はオレにだってついてるんだ。

慣れたようにさっと身を屈める。


 その瞬間、ちょうど腰辺りから回されるような彼女の右手にもハリセン。


 えぇっ、二刀流!?


「甘いっ!」


 気付いたときには、すでにハリセンはその身をしならせていた。


 スパン、スパァァン!

「いぃっでぇぇええっ!!」

 見事にオレはその衝撃を食らってしまうのだった。





 世の中には、抗えないものがある。


 オレの場合──……








 彼女かもしれない。


【to be continued…】


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