理想恋愛屋

2.鬼か姫か


「はぁーっ……」

 ここ最近、かわいい顔した鬼に怯える毎日。

彼女が学校という時間だけが、今では唯一の救い。


 だけど本日の時はすでに午後三時を迎える。


 タン、タン……。

 ほ~ら、やってきた。

静かに響く足音に、ずっしりと肩に予想される疲労がのしかかる。



 その足音はゆっくりと、この『理想恋愛屋』の扉の前でピタリと止まる足音。
オレは咄嗟にデスクに身を潜める。


 けれど、予想に反して静かに扉が開かれた。

そろりと隠していた顔を半分出して、入り口を覗いてみる。


 そこには毛先がきれいにカールされた清楚系セレブ風美女。

いかにも白とピンクがイメージカラー。


「恋愛屋さんってここで……」


 鈴でも鳴っているかのような声に、ゆっくり顔をあげる。

だけどその麗しの姿に、時が止まったように体が固まってしまった。



 別に一目惚れじゃない。



 一つ一つの仕草が、スローモーションで蘇る。



「萌……?」

 オレの声に反応して、ビクンと体を震わせていた。


「あ…おい……?」

 シンと静まり返る事務所。

どうしていいかわからずに立ちすくんだ。


 その時だ。

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