蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~

6.失いたくない




<side.慧>



時計の針は19:20を指している。

慧はノートパソコンの画面から顔を上げ、マウスを動かす手を止めた。

自室の仕事机の上には本やら書類やらが積み重なり、その一角に仕事用のノートパソコンが置いてある。


「・・・・・」


何をしていても・・・・

絢乃のことが脳裏から離れない。

慧は切ないため息をつき、目元を片手で覆った。


───あの夜。


ホテルのロビーにいた二人を目にした瞬間、慧の心に抑えきれない怒りが沸き上がった。

・・・なぜよりによって、ここに二人がいるのか。

しかも絢乃は、明らかに卓海から贈られたとわかる服を着ていた。

服の色も形も、絢乃の趣味ではないからだ。

けれど黒いドレスを身にまとい、髪を結いあげた絢乃の姿は、息も止まるほど美しかった。


───なぜ、絢乃の隣に立つのが自分ではないのか・・・。


< 116 / 200 >

この作品をシェア

pagetop