蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




・・・ぎり、と慧は唇を噛みしめた。

唇の端に、じわりと血が滲む。


───どうして、今この時に、自分はこの事実を知ってしまったのか。


慧はその場に片膝を立てて座り込み、目元を手で覆った。

・・・耐えられない。

今さら・・・もう・・・。


慧は昏い瞳で、日記とアルバムをじっと見つめた。

夕食の時の話からするに、初枝はこの事実を知らないだろう。

知っていたら、二人の結婚に断固として反対するはずだ。

そして恐らく、時世も知らないはずだ。

知っていたら、甥とはいえ藤村と昌美の子である自分を育てようなどとは思わないだろう。


・・・で、あれば・・・



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