蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



翌日。

絢乃は慧の衣類や身の回りの物が入った紙袋を片手に、ロイヤルパーク汐留タワーへと向かった。

このホテルはJR新橋駅の汐留口から、徒歩3分ほどのところにある。

ロビーに入ると、白と焦茶を基調としたスタイリッシュな空間が広がっている。

絢乃は受付で慧の部屋番号を聞き、エレベーターホールへと向かった。

慧が居るのは38階のタワーフロアと呼ばれる上層階の一室で、ビジネス用のパソコンやデスクが完備された部屋のようだ。

絢乃は38階でエレベーターを降り、受付で言われた慧の部屋の前に立った。

・・・中にいるのは慧だとわかっているのに、なぜか緊張する。

絢乃は紙袋の紐をぐっと握りしめ、コクリと息を飲み、ドアをノックしようと手を上げた。

その時。


「・・・あら?」


廊下の奥の方から声を掛けられ、絢乃はその手を止めた。

・・・見ると。

艶やかな美しい黒髪をゆったりと後ろで結いあげ、ピンクのワンピースの上に黒いコートを纏った綺麗な女性が、絢乃の方へと歩み寄ってくる。

絢乃はその顔を見、驚きのあまり息を飲んだ。

───角倉沙耶だ。


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