蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




・・・慧に、会いたい。

慧に、戻ってきてほしい・・・。


どんな理由を付けても・・・

多分、自分が願っているのはただそれだけだ。

ずっと自分の傍にいてくれた慧。

ずっと一番傍で、父のように母のように、絢乃を見守ってくれた慧。


───また行くと言ったら怒るだろうか。

けれど慧からは、まだ納得できる理由を聞いていない。

それに、慧が戻ってこないにしろ、この間あんな別れ方をしてしまったのが気にかかる。

・・・せめて、仲直りしたい。

それに、戻ってこないなら来ないで、これからどうするつもりなのかちゃんと聞く必要がある。

そもそも、今のマンションは慧の資産だ。

出て行くべきは絢乃の方だろう。

けれど・・・。

あの部屋に角倉沙耶と慧が住むと思うと、心が潰れそうに痛む。


どちらにしろ・・・

慧とは、もう一度ちゃんと話さなければならない。

絢乃は田町駅への道を歩きながら、『明日の夕方にもう一度会いに行く』という旨のメールを慧に送った。


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