大人的恋愛事情 SS
 
これが夏辺りの誕生日なら、言う機会もあったかのかもしれないけれど、あまりに誕生日が近過ぎて言うタイミングすらなかった。


「まあ別に今年はいいわよ」


そんなことを軽く言う私に、やっぱり仕事なんてしていない美貴ちゃんが溜息を吐いた。


「てか、言えばいいじゃないですか。今日、誕生日だって」


「いいわよ」


「どうしてですか?」


「言うほどの事でもないしね」


「誕生日が? 言うほどのことでもないんですか?」


「そうね」


「ホント繭さんって、冷めてるのか何なのか……」


呆れたように呟く美貴ちゃんの言葉を聞きながら、いい歳してさすがに自分から誕生日を言うような事は出来ないと思っていた。
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