大人的恋愛事情 SS
「そう言えば、繭のケーキ美味しかったよね」
「そうですよっ! 今日も作ればいいんじゃないですか?」
そんな二人の言葉を後にロッカールームを出る。
確かにバレンタインのあの日、社内に置いて帰った私の力作チョコケーキは、何故か詩織と美貴ちゃんが食べたという……。
まあ、勿体ないしね。
それはそれで無駄にしなくてよかったんだけど。
あの社内速報プロポーズ以来、週末は必ず一緒に過ごしている藤井祥悟。
そうは言っても、あれから3回目の週末だったりするので、やっぱりお互いよく知っているとまでは言えない。
あの後は、会う社員すべてに声を掛けられていたけれど、最近それも落ち着いてきたりして。
エレベーターを降り少し陽が長くなった、まだ暮れ切っていない社外に出ると、まだよく知っているとは言えない男が外の柱に凭れて立っていた。