大人的恋愛事情 SS
 
軽く返しながらも、本当は今すぐにでも帰りたいと思っていた。


誕生日以来、ほぼ毎日、仕事終わりは藤井祥悟の家で過ごすようになっている私。


家に帰ることもほとんどない生活は、毎日が藤井祥悟に埋め尽くされていて。


どれだけ一緒にいても、まったく足りてなかったりする。


優しく私を満たしてくれる男との時間は、本当に心地よく穏やかで……。


「繭さん飲みすぎてません?」


「そう?」


「そうですよ」


「まあいいじゃない」


少々飲んでも家に帰れば、藤井祥悟がいると思うと、安心して酔いもできたりする。


今日は送別会があることをわかっている男は、きっと今頃家で一人何かを食べているだろう。


そんなことを考え出すと、やはり帰りたくなってくる。


暫く部長の愚痴を聞き、不満そうな美貴ちゃんをたしなめていても、やっぱり帰りたいと思う私は席を立った。


「どこ行くんですか?」


「トイレ」


春になっていて助かった。
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