焼け木杭に火はつくか?
二人のそんなやりとり聞きながら、この場にそぐわないと思いつつも、聡を眺めていた良太郎は、次はあれ頼もうかなあなどとそんな呑気なことを考えていた。
ビールで割ったマッコリを、良太郎に教えてくれたのは聡だった。甘すぎてあまり好きではなかったマッコリが、驚くほど自分好みのアルコールになった。オレンジで割った黒ビールも、きっと美味いに違いないと、聡に全幅の信頼を寄せている良太郎はそう確信した。
聡は珍しくない飲み方だと言ったけれど、ビールはビールのまま、マッコリはマッコリのまま、良太郎はそんな飲み方しか知らなかったし、またそんな発想も思いつかない。
何事においても、自分より柔軟で機知に富んだ思考回路で考えられる聡が、この展開にどんなオチをつけるのか、良太郎はそれを密かに楽しんでいた。
しかし、そんな呑気なことを考えている良太郎の隣では、今度は長谷に変わり自分がというように、目をつり上げて怒りの気炎を吹き上げていた夏海が、聡に食いかかった。
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